ダランベールのパラドックス(英語: D'Alembert's paradox)とは、静止している 理想流体 ( 粘性 が0である流体)中に物体を 等速直線運動 させたときに、物体には抵抗力が働かないという、一見直感に反する事実(パラドックス)のこと。1743年の ダランベール の力学に関する著書に記されており、1768年まで考察が洗練されていった。
速度U の一様流に循環Γを重ねた流れ場に、半径R の円柱をおく。流体には粘性がないとすると、円柱の表面の圧力分布p は、ベルヌーイの式から
で与えられる。ここで
である。したがって、円柱にかかる流れ方向の抗力F はこの分布を積分して
となり、抗力がはたらかないという結果になる。
しかし実際には抵抗がはたらくため、この結果は矛盾する。
このパラドックスが生じる原因となる、流体に関する前提条件には以下のものが挙げられる:
したがって、これらの前提のうちいずれかが成り立たないことが抵抗の原因である。すなわち、抵抗力を評価するには
などが必要となる。