流体力学において、ヘリシティー(英: helicity)はコルクスクリュー様の回転運動が起こる程度を表す。乱流を理論的に記述するために有用な概念である。
流体の塊が運動しているとき、流体の進行方向に平行な軸について回転する 固形物の運動 の度合いがヘリシティーである。もし回転が物体の前方から見て 時計回り であるなら、ヘリシティーは正の値であり、反時計回りであるなら、ヘリシティーは負の値である。
ヘリシティーH は速度u と渦度ζ = ∇×u の内積で定義され、次の式で表すことができる:
ヘリシティは保存量であるため、この概念は重要である。すなわち、ヘリシティーH は、非粘性、非圧縮性流れについてのオイラー方程式に従って、流体中で不変である。これは 磁気ヘリシティー の保存と同様である。
速度u が極性ベクトル、渦度ζが 軸性ベクトル であることから、その内積であるヘリシティーH は擬スカラーである。鏡映対称な系ではヘリシティーは 0 となるため、非零のヘリシティーは、その系の鏡映対称性の破れを示す指標となる。
気象学において、ヘリシティは、対流運動環境から空気塊への渦度の遷移に一致する。ヘリシティーの定義には、風および渦度の水平成分のみが用いられる。その定義は次のとおりである:
ここで、Z は高度、Vh は速度の水平成分、そしてζh は渦度の水平成分である。