スライム(英: slime)は本来、ある種の性状を持った物質(どろどろ、ぬるぬるしたもの)を大ざっぱに指す言葉であった。従って粘土や泥などの無機物から、生物の分泌する粘液などの有機物、またそれらの複合体など実に様々なものがスライムと呼ばれる。
ここでは人工的に作られ、玩具や教材として使われているスライムを紹介する。
アメリカ合衆国では玩具メーカーのマテルにより、1976年から1979年まで出荷され、発売翌年の1977年だけで約1000万個が売れた。日本では1978年、ツクダオリジナル(現 メガハウス第4事業部)がマテル社製玩具のスライム状の物質を日本で発売し、同年の報告によれば小学生を中心に250万個が売れた。当時ツクダオリジナルの責任者だった和久井威によると、ニューヨークのトイショーで見て「インスピレーション」で販売を決めたという。国内業者向けの内見会での反応はよくなかったが、発表会の報道やテレビ番組「金曜10時!うわさのチャンネル!!」で使われたことで人気に火がついた。原料の大部分が水であるため、日本での大ブーム時にはツクダが製造に大量の水を必要としたことで、水道局からクレームが来たという逸話もある。和久井威は、実際の製造は大阪のコルマという化粧品メーカー(製造には化粧品製造用の機器が必要なため)が担当したが、ブームによりコルマで使用する水が不足し、スライム専用の水道管を増設したと述べている。
この「スライム」は小さなポリバケツを模した容器に収められた、緑色の半固形の物体で、手にべとつかない程度の適度な粘性と冷たく湿った感触がある。触って遊ぶためだけの玩具であったが、それまでにない新鮮な感覚をもたらしたため大ヒットし、後に様々な類似商品も生まれた。
そもそもは第二次世界大戦の時にゴムの産地を日本軍に占拠され、ゴム不足となったアメリカで、人工的にゴムを作ろうとして生まれた物であった。また、アメリカで樹脂から化粧品を製造しようとした過程で作られたとの説もある。
1985年、第8回科学教育国際会議でマイアミ大学の A.M.Sarquis が初めて日本に紹介し、理科教材として広まった。ポリビニルアルコール (PVA) は合成糊や洗濯糊の主成分であり、直鎖状の高分子である。これがホウ砂を介して架橋結合するため、ゲル化する。代表的な作り方は以下の通り。
澱粉 (片栗粉やコーンスターチなど)に水を適量(澱粉:水=3:2程度)加えると、液体のように見えて力が加わると固化する性質(ダイラタンシー)をもった、スライム状の物質ができる。これはウーブレック (oobleck) と呼ばれ、液体と固体の性質の違いや非ニュートン流体について説明する理科教材として使われている。
この名前は、アメリカ合衆国の作家ドクター・スースの童話『 ふしぎなウーベタベタ 』(1949年)に登場する、天から降ってきたどろどろの物体にちなんで付けられた。
このスライムや、木工用ボンド(酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤)などに澱粉と少量の塩を加えて作られたものはグラーチ (glurch; glue+starch) とも呼ばれ、やはり教材や玩具として作られる。